「留守番虐待」の埼玉条例はなぜ撤回?批判の声をまとめてみた

「留守番虐待」の埼玉条例はなぜ撤回?批判の声をまとめてみた
「留守番虐待」の埼玉条例はなぜ撤回?批判の声をまとめてみた

子どもの留守番は虐待と言えるのでしょうか。

自民党埼玉県議団が2023年10月4日に提出した条例改正案(大きな反発を受け取り下げ)によって大きな注目を集めた議論は間違いなく今後も出てくることになりそうです。

そこで今回はこの自民党埼玉県議団がなぜそのような条例を出そうとしたのか、それに対してどのような批判が寄せられたのかまとめていきます!

大きな波紋!虐待禁止条例の改正案

今、大きな波紋を呼んでいる埼玉県の虐待禁止条例の改正案。子どもの放置など悲惨な事件が相次いでいることを懸念して作られたものだとされていますが、どのような内容だったのでしょうか。

提出された改正案(一部抜粋)

第6条の次に次の1条を加える。

(児童の放置の禁止等)

第6条の2 児童(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるものに限る。)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない。

2 児童(9歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した児童であって、12歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるものに限る。)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置(虐待に該当するものを除く。)をしないように努めなければならない。

3 県は、市町村と連携し、待機児童(保育所における保育を行うことの申込みを行った保護者の当該申込みに係る児童であって保育所における保育が行われていないものをいう。)に関する問題を解消するための施策その他の児童の放置の防止に資する施策を講ずるものとする。

(出典:NHK

つまり、罰則規定はないものの、子どもを「放置」することを児童虐待と位置づけて禁止しています。

改正案の要約

提出された改正案は具体的には、保護者などに対して小学3年生以下の子どもを「放置」することの禁止を義務づけ、小学4年生から6年生までは努力義務としています。

この「放置」について埼玉県議会自由民主党議員団は、「子どもを自宅に留守番させて外出すること」や「子どもだけで公園で遊ぶこと」もあたると説明していました。

子どもを家などに残したまま保護者などが外出するといった放置は、「虐待」にあたるとしています。

「放置」の例

▼子どもを車の中に置き去りにすること

▼子どもたちだけの自宅での留守番

▼未成年の高校生に小学生などのきょうだいを預けて買い物に出かける行為

▼子どもだけ家に残してゴミ捨てに行く行為

▼子どもたちだけで公園などで遊ぶこと

▼子どもたちだけでの登下校

▼子どもにおつかいさせる行為

委員会で挙がった反対や批判の意見

この改正案を審議した委員会では以下の批判、反対意見が挙げられました。

「放課後児童クラブに入れない待機児童も多数いる中で、預け先がない親をさらに追い詰めることになるのではないか」

「出勤が朝早くて見守りたくても留守番させて出勤せざるをえないケースなど日常でよくあるケースが条例違反となるのでは」「ワンオペでやむをえず留守番させなくてはいけない親の負担が増す」

埼玉県議会自由民主党議員団の反論

改正案を主導した議員団は念頭に「子供が巻き込まれる悲惨な事件が多く、それを防ぎたい」というものがあり、放置について委員会において、以下のように述べています。

「すぐに駆けつけられる状態が確保されないかぎり放置と考える」

「細かい距離や時間の問題ではなく、子どもの視点にたって、子どもを危険な状態に置かない、放置しないという社会的機運を高めていくべき」

子育て世帯から反対意見(一部抜粋)

今回の条例の改正案については、子育て中の人からは「子どもの安全のためには必要だ」という声もある一方で、「今の子育ての状況をふまえると厳しすぎる」などの反対意見が相次ぎました。

埼玉県によると、10月10日午前10時までに873件の意見が寄せられ、このうち反対が871件、賛成が2件だということです。

小4と小6の母親

「お兄ちゃんに鍵を持たせてお留守番をさせる機会も多いです。共働きの親としてはずっと子どもに付き添えませんし、ちょっと乱暴な気がします」

3人の子どもの父親

「子どもを守るという趣旨は理解できますが、高校生の兄はしっかりしていますし、留守番で下の子を見てもらうこともあります。それもダメというのはちょっと厳しすぎると思う」

40代の母親

「下の子の幼稚園のお迎えにはいちいち上の子はついて来ませんし、やむをえず留守番する時間ができてしまう。」

30代の母親

「小学生は放課後児童クラブも入れない状況もあるのに、子どもの受け皿となる対策が整わない段階で禁止だけするのはおかしい。子育てしている人が考えた案とは思えない」

PTA協議会も反対

さいたま市PTA協議会は、「ほとんどの保護者が条例違反にあてはまる」などとして改正案に反対する意見を伝えました。

さいたま市PTA協議会 郡島典幸会長のコメント

「子どもの自由を奪ったうえで子育てに関する責任を親だけに押し付けるような条例だと感じる。各学校のPTAからも懸念の声が寄せられていて、子育て支援を充実させるという社会の流れと逆行していると感じる」

最後に

これまでも留守番 何歳からという議論は少なからずあり、子どもだけの時間をなるべく減らすべきという考えは多くありました。

ただ今回の改正案はかなり横暴で、子どもだけで公園で遊ぶのもダメ、となると、子ども自身もそれを煩わしく感じて、より外で遊ばなくなるのではないのか、という懸念も生まれますよね。

留守番 何歳からという議論は永遠になくなることはないと思いますが、今回の改正案が良い方向での議論の機会になるといいですよね!